数学\(\mathtt{ VB } \ \)ガロア流方程式の解法技術


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1st upload: 2023/06/17
revision2 : 2023/07/27
revision3 : 2024/12/22
revision4 : 2025/09/14

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【第5章】恐怖の因数分解:Trager Algorithm

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\(\qquad \qquad \qquad f(x)=x^3-3x+1 \qquad Galois \ Group:A_3 \quad GCD \)

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【5-2】\(Res(f(x+v),g(v),v)\) の計算

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終結式は一般的に、シルベスター行列(Sylvester matrix)の行列式として記述できます。
シルベスター行列に関しては、教科書を見ていただく事にして、前節で記述したTrager Algorithmを順を追って 説明してゆきます。

(step.1)(step.2)
\(f(x),g(v)\) を再掲します。 \(f(x+s \cdot v)\) の \(s\) を \(s=1\) とします。すると、 \(f(x+v)\)は以下となります。

\begin{align} f(x)&=x^3-3x+1 \\ g(v)&=v^3-9v-9 \\ \notag \\ f(x+v)&=(x+v)^3-3(x+v)+1 \notag \\ &=v^3+(3x)v^2+(3x^2-3)v+(x^3-3x-1) \\ \end{align}


(2.3)の \(f(x+v)\) を \(v\) の多項式と考え、(2.2)の \(g(v)\) と共に \(v\) の3次から0次までの 係数を(2.4)の様に並べたものがシルベスター行列です。(ここでは \(SylM\) と記します。)

\begin{align} &SylM=\begin{bmatrix} 1 & 3x & (3x^2-3) & (x^3-3x+1) & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 3x & (3x^2-3) & (x^3-3x+1) & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 3x & (3x^2-3) & (x^3-3x+1) \\ 1 & 0 & -9 & -9 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & -9 & -9 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & -9 & -9 \end{bmatrix}\\ \end{align}

(step.3)
(2.4)のシルベスター行列の行列式を計算する際には、代数計算ソフトmaximaの終結式を計算する命令 \( Res(f(x+v) ,g(v),v)\) を使います。 更にその行列式を因数分解すると、(2.6)の様に3つの多項式に分解できます。

\begin{align} &Res(f(x+v) ,g(v),v)=det(SylM) \notag \\ &\qquad =-{{x}^{9}}+36 {{x}^{7}}-30 {{x}^{6}}-351 {{x}^{5}} +396 {{x}^{4}}+1023 {{x}^{3}}-1080 {{x}^{2}}-612 x+296 \\ \notag \\ &\qquad =-(x^3-21x+37)(x^3-12x-8)(x^3-3x+1)=-R_1(x) \cdot R_2(x) \cdot R_3(x)\\ \notag \\ \end{align}

\begin{align} &R_1(x)=x^3-21x+37, \quad R_2(x)=x^3-12x-8, \quad R_3(x)=x^3-3x+1\\ \end{align}


上記の終結式の計算結果は \(x\) の多項式になる事は簡単に予想出来ましす。しかし、「なんで3つの\(F_0\)上の多項式に因数分解されるのか?」 という驚きと疑問が絶対に湧くと思います。(step.4)の説明をするためにはどうしてもこの謎を説明する必要がありますので、少し寄り道します。
Trager Algorithmは、この点がもっとも重要なポイントとなります。


【5-3】\(Res(f(x+v),g(v),v)\) のもう一つの見方(1)

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終結式の定義には、上記のシルベスター行列の行列式の定義の他に、以下の定義式があります。(3.3)の定義式を使って式を終結式を変形してゆきます。

\begin{align} f(x)&=a(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)....(x-\alpha_n) \\ g(x)&=b(x-\beta_1)(x-\beta_2)....(x-\beta_m) \\ \notag \\ Res &(f(\bbox[#FFFF00]{x}),g(\bbox[#FFFF00]{x}),\bbox[#FFFF00]{x})=a^{m}b^{n}\prod_{i=1}^{n}\prod_{j=1}^{m}(\alpha_i-\beta_j)\\ \end{align}


(3.3)は消去される主変数 \(x\) が黄色になっています。そこで、終結式 \(Res(f(x+\bbox[#FFFF00]{v}),g(\bbox[#FFFF00]{v}),\bbox[#FFFF00]{v})\) を計算する場合、 消去される主変数は \(v\) である事に注意してください。
その為には、 \(f(x+v)\) の主変数は \(x\) でなく \(v\) であると考える必要があります。すると \(f(x+v)\) の根は、(3.6)の様に \(x\) を含む黄色で示した部分と 考える事が出来ます。\(g(v)\) はもともと主変数が \(v\) であり、その根は \(\{v_1,v_4,v_5\}\) なので式変形をする必要ありません。

\begin{align} f(x)&=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma) \\ \Downarrow \notag \\ f(x+v)&=(x+v-\alpha)(x+v-\beta)(x+v-\gamma) \\ \Downarrow \notag \\ f(v+x)&=(v+x-\alpha)(v+x-\beta)(v+x-\gamma-x) \notag \\ &=\bigl(v-\bbox[#FFFF00]{(\alpha-x)}\bigr)\bigl(v-\bbox[#FFFF00]{(\beta-x)}\bigr)\bigl(v-\bbox[#FFFF00]{(\gamma-x)}\bigr) \\ \notag \\ g(v)&=(v-\bbox[#FFFF00]{v_1})(v-\bbox[#FFFF00]{v_4})(v-\bbox[#FFFF00]{v_5})\\ \notag \\ \end{align}

上記(3.6)(3.7)の黄色で示された根を、定義式 (3.3)の \( \{ \alpha_i,\beta_j \} \) に代入してみます。

\begin{align} &Res(f(\bbox[#FFFF00]{v}+x),g(\bbox[#FFFF00]{v}),\bbox[#FFFF00]{v})=\prod_{i=1}^{3}\prod_{j=1}^{3}(\alpha_i-\beta_j) \\ &\{\alpha_1 \leftarrow (\alpha-x) , \alpha_2 \leftarrow (\beta-x) , \alpha_3 \leftarrow (\gamma-x) \},\{\beta_1 \leftarrow v_1, \beta_2 \leftarrow v_4, \beta_3 \leftarrow v_5 \} \\ \end{align} \begin{align} &\Downarrow \notag \\ Res(f(x+v),g(v),v)=&\bigl((\alpha-x)-v_1\bigr)\bigl((\beta-x)-v_1\bigr)\bigl((\gamma-x)-v_1\bigr) \notag \\ &\bigl((\alpha-x)-v_4\bigr)\bigl((\beta-x)-v_4\bigr)\bigl((\gamma-x)-v_4\bigr) \notag \\ &\bigl((\alpha-x)-v_5\bigr)\bigl((\beta-x)-v_5\bigr)\bigl((\gamma-x)-v_5\bigr)\\ &\Downarrow \notag \\ Res(f(x+v),g(v),v)=(-1)&(x+v_1-\alpha)(x+v_1-\beta)(x+v_1-\gamma) \notag \\ &(x+v_4-\alpha)(x+v_4-\beta)(x+v_4-\gamma) \notag \\ &(x+v_5-\alpha)(x+v_5-\beta)(x+v_5-\gamma) \\ \end{align}

以上の式変形において、「何が主変数なのか?」「何が根に相当しているのか?」「符号はどうなっているか?」などに細心の注意を払ってください。 さもないと何がどうなっているのか訳が分からなくなります。


【変数 \(x\) と \(v\) に関して】
この章は混乱を招くような文字の使い方がいたるところ潜んでいます。念のためにコメントしておきます。

(3.4)の \(x\) は普通に使われる主変数です。 (3.5)の \((x+v)\) は何か?それは。(3.4)の \(x\) に \((x+v)\) を代入したものです。(3.5)の主変数は依然として \(x\) が主変数です。
では(3.6)の \(v\) は何か?この式では「主変数が \(x\) から \(v\) になりました」という雰囲気を出しています。

何故そうしたかというと、(3.3)と(3.8)を見比べてください。(3.3)の \(f(x)\) と \(g(x)\) の主変数は \(x\) です。しかし(3.8)の主変数は \(v\) です。従って、(3.8)の右辺で使われている \(\{\alpha_i,\beta_j\}\) の根は、\(\{f(v+x),g(v)\}\) の主変数 \(v\) の根 としなければなりません。従って(3.5)を(3.6)の様に変形して、何処が \(f(v+x)\) の根なのかを明示できるようにしました。(少しばかげているかもしれませんが)
そうすることにより(3.9)に示すような根の対応関係が生まれたわけです。

こうすることにより(3.8)の定義式にしたがって、終結式は(3.10)の様に計算できます。
そして更に、(3.11)の様に変形していますが、この時、(3.11)は、今度は主変数を \(x\) にしてやろうという意図が見え見えです。

更に変数の話は続くのですが、次節では変数 \(v\) と、\(g(v)\) の根 \(v_1\) を同一視することも平気でやっています。 この辺のところ注意して解説を見て下さい。


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