ガロア理論を使って方程式を解いた事ありますか?

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【例題1】 EX1-RT1  EX1-RT2  EX1-RT3  EX1-RT4   ガロア群
         \(f(x)=x^3+3x+1\)           \(S_3\)
【例題2】 EX2  \(f(x)=x^3-3x+1\)           \(A_3\)
【例題3】 EX3  \(f(x)=x^5-10x^3+5x^2+10x+1\)  \( \ \ C_5\)
【例題4】 EX4  \(f(x)=x^4+4x+2\)           \(S_4\)


    【補足1】 APX1 代数体上での因数分解
    【補足2】 APX2 1の原始冪乗根 \("\omega \ and \ \zeta_5"\) の計算
    【補足3】 APX3 巡回多項式と円分方程式 \(\Phi_{17}(x)\)
    【補足4】 APX4 添加数生成時の計算のポイント
    【補足5】 APX5 \(x^3-2=0, \ x^5-3=0\) に関して
    【補足6】 APX6 拡大体 \(F_i\) での計算の注意点

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APX4 添加数生成時の計算のポイント

題材は、【例題4】の「EX4-8 \(F_2/F_1\) の計算:最小多項式\(g_2(x)\)を求める」の節です。

EX4-8の計算をしていて、疑問に思ったのは、「EX4-8 式(62)の \(\{q_1,q_2\}\) は何故 \(F_1[x]\) の 多項式として表現できるのだろうか?」という事でした。そこで、この疑問に対する自分なりの理解を メモにしてみました。(以下の記述にはEX4-8の式番号や文字を引用しております。)

ガロア拡大 \(F_2/F_1\) のガロア群は、\(Gal(F_2/F_1)=A_4/V_4\) です。この群は剰余群でかつ3次の巡回群\(C_3\)と等価です。 そこで、3次の巡回群の元を \(\{\rho_1(=e),\rho_2,\rho_3\}\) とします。 \(\{\rho_1,\rho_2,\rho_3\}\) は下式の様に、\(A_4\) の元で構成されます。

\begin{align} \setCounter{0} &\rho_1=\{\sigma_{1},\sigma_{8},\sigma_{17},\sigma_{24}\}=\{V_4\} \quad \rho_2=\{\sigma_{4},\sigma_{12},\sigma_{13},\sigma_{21}\} \quad \rho_3=\{\sigma_{5},\sigma_{9},\sigma_{10},\sigma_{20}\} \\ \end{align}

次に原始元 \(v=v_1\) に対して、\(\{\rho_1,\rho_2,\rho_3\}\) の各要素が作用した結果を、\(\{\rho_1(v),\rho_2(v),\rho_3(v)\}\) と表示すると以下の式で表されます。(この様な表示は、数学的には誤用かもしれませんが...)

\begin{align} &\rho_1(v)=\{v_{1},v_{8},v_{17},v_{24}\} \quad \rho_2(v)=\{v_{4},v_{12},v_{13},v_{21}\} \quad \rho_3(v)=\{v_{5},v_{9},v_{10},v_{20}\} \\ \end{align}


この \(\{\rho_1(v),\rho_2(v),\rho_3(v)\}\) を使って、\(\{h_0,h_1,h_2\}\) の定義がされます。それが式(3)です。 この式を展開して \(\{h_0,h_1,h_2\}\) の係数を、\(g_0(x)\) の共役根 \(v_i\) を使って以下の様に表してみました。

\begin{align} &\left\{ \begin{array}{l} h_0=\left( x-{v_1}\right) \, \left( x-{v_8}\right) \, \left( x-{v_{17}}\right) \, \left( x-{v_{24}}\right) \\ h_1=\left( x-{v_4}\right) \, \left( x-{v_{12}}\right) \, \left( x-{v_{13}}\right) \, \left( x-{v_{21}}\right) \\ h_2=\left( x-{v_5}\right) \, \left( x-{v_9}\right) \, \left( x-{v_{16}}\right) \, \left( x-{v_{20}}\right) \\ \end{array} \right. \\ \notag \\ &\left\{ \begin{array}{l} h_0=x^4+a_3x^3+a_2x^2+a_1x+a_0 \\ \quad a_3=-{v_{24}}-{v_{17}}-{v_8}-{v_1} \\ \quad a_2={v_{17}} {v_{24}}+{v_8} {v_{24}}+{v_1} {v_{24}}+{v_8} {v_{17}}+{v_1} {v_{17}}+{v_1} {v_8} \\ \quad a_1=-{v_8} {v_{17}} {v_{24}}-{v_1} {v_{17}} {v_{24}}-{v_1} {v_8} {v_{24}}-{v_1} {v_8} {v_{17}} \\ \quad a_0={v_1} {v_8} {v_{17}} {v_{24}} \\ \end{array} \right. \\ \notag \\ &\left\{ \begin{array}{l} h_1=x^4+b_3x^3+b_2x^2+b_1x+b_0 \\ \quad b_3=-{v_{21}}-{v_{13}}-{v_{12}}-{v_4}\\ \quad b_2={v_{13}} {v_{21}}+{v_{12}} {v_{21}}+{v_4} {v_{21}}+{v_{12}} {v_{13}}+{v_4} {v_{13}}+{v_4} {v_{12}}\\ \quad b_1=-{v_{12}} {v_{13}} {v_{21}}-{v_4} {v_{13}} {v_{21}}-{v_4} {v_{12}} {v_{21}}-{v_4} {v_{12}} {v_{13}}\\ \quad b_0= {v_4} {v_{12}} {v_{13}} {v_{21}} \end{array} \right. \\ \notag \\ &\left\{ \begin{array}{l} h_2=x^4+c_3x^3+c_2x^2+c_1x+c_0 \\ \quad c_3=-{v_{20}}-{v_{16}}-{v_9}-{v_5}\\ \quad c_2={v_{16}} {v_{20}}+{v_9} {v_{20}}+{v_5} {v_{20}}+{v_9} {v_{16}}+{v_5} {v_{16}}+{v_5} {v_9}\\ \quad c_1=-{v_9} {v_{16}} {v_{20}}-{v_5} {v_{16}} {v_{20}}-{v_5} {v_9} {v_{20}}-{v_5} {v_9} {v_{16}}\\ \quad c_0= {v_5} {v_9} {v_{16}} {v_{20}}\\ \end{array} \right. \\ \end{align}


次にグループ化された \(\{\rho_1(v),\rho_2(v),\rho_3(v)\}\) が、ガロア拡大 \(F_2/F_1\) の 自己同型写像 \(\{\rho_1,\rho_2,\rho_3\}\) の各要素によって、どの様に写像されるか?を 【表1】にまとめてみました。
この表からわかる事は、グループ内では順序が入れ替わるが、色付けされている様に、グループが一塊 として写像されていることが判ります。
【表1】 \(\sigma_i(v_j)\)の変換表

\( i \backslash j \)\(v_1\)\(v_8\)\(v_{17}\)\(v_{24}\)\(v_4\)\(v_{12}\) \(v_{13}\)\(v_{21}\)\(v_5\)\(v_9\)\(v_{16}\)\(v_{20}\)
\(\rho_1\) \(\sigma_{1}\)\(v_{1}\)\(v_{8}\)\(v_{17}\)\(v_{24}\)\(v_{4}\)\(v_{12}\) \(v_{13}\)\(v_{21}\)\(v_{5}\)\(v_{9}\)\(v_{16}\)\(v_{20}\)
\(\sigma_{8}\)\(v_{8}\)\(v_{1}\)\(v_{24}\)\(v_{17}\)\(v_{12}\)\(v_{4}\) \(v_{21}\)\(v_{13}\)\(v_{9}\)\(v_{5}\)\(v_{20}\)\(v_{16}\)
\(\sigma_{17}\)\(v_{17}\)\(v_{24}\)\(v_{1}\)\(v_{8}\)\(v_{13}\)\(v_{21}\) \(v_{4}\)\(v_{12}\)\(v_{16}\)\(v_{20}\)\(v_{5}\)\(v_{9}\)
\(\sigma_{24}\)\(v_{24}\)\(v_{17}\)\(v_{8}\)\(v_{1}\)\(v_{21}\)\(v_{13}\) \(v_{12}\)\(v_{4}\)\(v_{20}\)\(v_{16}\)\(v_{9}\)\(v_{5}\)
\(\rho_2\) \(\sigma_{4}\)\(v_{4}\)\(v_{13}\)\(v_{21}\)\(v_{12}\)\(v_{5}\)\(v_{16}\) \(v_{20}\)\(v_{9}\)\(v_{1}\)\(v_{17}\)\(v_{24}\)\(v_{8}\)
\(\sigma_{12}\)\(v_{12}\)\(v_{21}\)\(v_{13}\)\(v_{4}\)\(v_{9}\)\(v_{20}\) \(v_{16}\)\(v_{5}\)\(v_{8}\)\(v_{24}\)\(v_{17}\)\(v_{1}\)
\(\sigma_{13}\)\(v_{13}\)\(v_{4}\)\(v_{12}\)\(v_{21}\)\(v_{16}\)\(v_{5}\) \(v_{9}\)\(v_{20}\)\(v_{17}\)\(v_{1}\)\(v_{8}\)\(v_{24}\)
\(\sigma_{21}\)\(v_{21}\)\(v_{12}\)\(v_{4}\)\(v_{13}\)\(v_{20}\)\(v_{9}\) \(v_{5}\)\(v_{16}\)\(v_{24}\)\(v_{8}\)\(v_{1}\)\(v_{17}\)
\(\rho_3\) \(\sigma_{5}\)\(v_{5}\)\(v_{20}\)\(v_{9}\)\(v_{16}\)\(v_{1}\)\(v_{24}\) \(v_{8}\)\(v_{17}\)\(v_{4}\)\(v_{21}\)\(v_{12}\)\(v_{13}\)
\(\sigma_{9}\)\(v_{9}\)\(v_{16}\)\(v_{5}\)\(v_{20}\)\(v_{8}\)\(v_{17}\) \(v_{1}\)\(v_{24}\)\(v_{12}\)\(v_{13}\)\(v_{4}\)\(v_{21}\)
\(\sigma_{16}\)\(v_{16}\)\(v_{9}\)\(v_{20}\)\(v_{5}\)\(v_{17}\)\(v_{8}\) \(v_{24}\)\(v_{1}\)\(v_{13}\)\(v_{12}\)\(v_{21}\)\(v_{4}\)
\(\sigma_{20}\)\(v_{20}\)\(v_{5}\)\(v_{16}\)\(v_{9}\)\(v_{24}\)\(v_{1}\) \(v_{17}\)\(v_{8}\)\(v_{21}\)\(v_{4}\)\(v_{13}\)\(v_{12}\)

上の表を使って、\(\{h_0,h_1,h_2\}\) の係数の中の一つ \(b_3\) に対して、 \(\rho_2\) がどの様に作用するか? 例として以下に計算してみます。

\begin{align} &\rho_2 \ni \sigma_{4}, \quad \sigma_{4}(b_3)=\sigma_{4}(-v_{21}-v_{13}-v_{12}-v_{4})=-v_{9}-v_{20}-v_{16}-v_{5}=c_3 \notag \\ &\therefore \ \sigma_{4}(b_3)=c_3 \notag \\ &同様に \quad \sigma_{12}(b_3)=c_3, \ \sigma_{13}(b_3)=c_3, \ \sigma_{21}(b_3)=c_3 \quad \Rightarrow \quad \therefore \ \rho_2(b_3)=c_3\\ \notag \\ &\rho_3 \ni \sigma_{5}, \quad \sigma_{5}(b_3)=\sigma_{5}(-v_{21}-v_{13}-v_{12}-v_{4})=-v_{17}-v_{8}-v_{24}-v_{1}=a_3 \notag \\ &\therefore \ \sigma_{5}(b_3)=a_3 \notag \\ &同様に \quad \sigma_{9}(b_3)=a_3, \ \sigma_{16}(b_3)=a_3, \ \sigma_{20}(b_3)=a_3 \quad \Rightarrow \quad \therefore \ \rho_3(b_3)=a_3\\ \notag \\ \end{align}

\begin{align} \rho_2 \ni \sigma_{12}, \quad \sigma_{12}(a_0)&= \sigma_{12}(v_{1}v_{8}v_{17}v_{24})=\sigma_{12}(v_1)\sigma_{12}(v_8)\sigma_{12}(v_{17})\sigma_{12}(v_{24}) \notag \\ &=v_{12}v_{21}v_{13}v_{4} =b_0 \qquad \therefore \ \sigma_{12}(a_0)=b_0 \notag \\ 同様に \quad \sigma_{4}(a_0)=b_0 &, \ \sigma_{13}(a_0)=b_0, \ \sigma_{21}(a_0)=b_0 \quad \Rightarrow \quad \therefore \ \rho_2(a_0)=b_0\\ \end{align}


上記と同様な計算を \(\{h_0,h_1,h_2\}\) の係数 \(\{a_i,b_j,c_k\},[i,j,k]=[0,1,2,3,4]\) 全てに対して計算すると、 \(\{\rho_1,\rho_2,\rho_3\}\) の写像結果は【表2】の様にまとめられます。
これら係数の線形和である \(\{h_0,h_1,h_2\}\) も、【表3】の様に係数と全く同様な変化を受けます。
【表2】 \(\rho_i(a_i,b_j,c_k)\) 変換表
\(\rho_i(a_i)\)\(\rho_i(b_j)\)\(\rho_i(c_k)\)
\(\rho_1\)\(a_i\)\(b_j\)\(c_k\)
\(\rho_2\)\(b_i\)\(c_j\)\(a_k\)
\(\rho_3\)\(c_i\)\(a_j\)\(b_k\)
【表3】】 \(\rho_i(h_j)\) 変換表
\(\rho_i(h_0)\)\(\rho_i(h_1)\)\(\rho_i(h_2)\)
\(\rho_1\)\(h_0\)\(h_1\)\(h_2\)
\(\rho_2\)\(h_1\)\(h_2\)\(h_0\)
\(\rho_3\)\(h_2\)\(h_0\)\(h_1\)

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