ガロア理論を使って方程式を解いた事ありますか?

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【例題1】 EX1-RT1  EX1-RT2  EX1-RT3  EX1-RT4   ガロア群
         \(f(x)=x^3+3x+1\)           \(S_3\)
【例題2】 EX2  \(f(x)=x^3-3x+1\)           \(A_3\)
【例題3】 EX3  \(f(x)=x^5-10x^3+5x^2+10x+1\)  \( \ \ C_5\)
【例題4】 EX4  \(f(x)=x^4+4x+2\)           \(S_4\)


    【補足1】 APX1 代数体上での因数分解
    【補足2】 APX2 1の原始冪乗根 \("\omega \ and \ \zeta_5"\) の計算
    【補足3】 APX3 巡回多項式と円分方程式 \(\Phi_{17}(x)\)
    【補足4】 APX4 添加数生成時の計算のポイント
    【補足5】 APX5 \(x^3-2=0, \ x^5-3=0\) に関して
    【補足6】 APX6 拡大体 \(F_i\) での計算の注意点

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APX5 \(x^3-2=0, \ x^5-3=0\) に関して

この【補足5】で取り上げたテーマは、以前より井汲景太氏が指摘されている問題です。上記の方程式の場合、 従来方法だと、「添加数を計算する際にゼロ割が発生し上手くゆかない事がある。」と言う問題でした。
事の細かい経緯は、以下の井汲氏のWeb Pageをご覧いただければお判りになると思います。

    https://ikumi.que.jp/blog/archives/724
    https://ikumi.que.jp/blog/archives/734

私が計算していて感じた事は、

「 体 \(Q\) で求めた \(v\) の最小多項式は、本当に基礎体 \(F_0=Q(\omega)\) で既約か?と言う疑問でした」

以下、この疑問に関して説明してゆきますが、途中までは従来の計算方法なので、細かい説明は省きます。

APX5-1 方程式 \(x^3-2=0\) の \(V(x)\) の計算

【例題1】EX1-RT3と同じ方法で、原始根 \(v\) が満たすべき \(V(x)\) の計算をします。

\begin{align} \setCounter{0} f(x)&=x^3-2=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)\\ v&=\alpha+2 \cdot \beta+3 \cdot \gamma \\ \notag \\ f(x)&=(x-\alpha)(x^2+\alpha x+\alpha^2)+(\alpha^3-2) \notag \\ &=(x-\alpha)q_1(x)+r_1\\ \notag \\ q_1(x)&=(x-\beta)( x+\alpha+\beta )+(\beta^2+\alpha \beta +\alpha^2) \notag \\ &=(x-\beta)q_2(x)+r_2\\ \notag \\ q_2(x)&=(x-\gamma) \cdot 1+(\alpha+\beta+\gamma) \notag \\ &=(x-\gamma)q_3(x)+r_3\\ \end{align}

上式より \(\{ \ f(x), \ q_1(x), \ q_2(x) \ \}\) はそれぞれ \(\{ \alpha,\beta,\gamma\}\)を 根に持つので、以下の式が成り立ちます。そして、式(2)の右辺を移項して\(r_4\) と定義します。

\begin{align} &\left\{ \begin{array}{l} f(\alpha)=0 \quad &\Rightarrow \quad r_1=\alpha^3-2=0\\ q_1(\beta)=0 \quad &\Rightarrow \quad r_2=\beta^2+\alpha \beta +\alpha^2=0\\ q_2(\gamma)=0 \quad &\Rightarrow \quad r_3=\alpha+\beta+\gamma=0\\ eq(2) \quad &\Rightarrow \quad r_4=v-(\alpha+2\beta+3\gamma)=0\\ \end{array} \right. \\ \end{align}

式(6)を、未知数\(\{ \ \alpha, \ \beta, \ \gamma, \ v \ \}\) の多元連立方程式と考えます。解法の手順は、 未知数を少なくして問題を簡単化するのですが、その場合、「終結式」を使う「消去法」と言う 手法を使います。そこで以下の様に、計算ソフトmaximaの \(resultant(p,q,z)\) と言う命令を使い、式 \(\{p,q\}\) の 中の変数 \(z\) を消去してゆきます。

\begin{align} &s_1:resultant(r_4,r_3,\gamma); \quad s_1=-\beta -2 \alpha -v=0 \notag \\ & \qquad \qquad \Downarrow \notag \\ &s_2:resultant(s_1,r_2,\beta); \quad s_2=3 {{\alpha }^{2}}+3 v \alpha +{{v}^{2}}=0 \notag \\ & \qquad \qquad \Downarrow \notag \\ &s_3:resultant(s_2,r_1,\alpha); \quad s_3={{v}^{6}}+180=0 \\ \notag \\ &V(x) \equiv x^6+180 :irreducible \ polynomial \ on \ Q \\ \end{align}

従って原始元 \(v\) は式(7)を満足しなければならない事が判りました。
そこで改めて、\(s_3\) を式(8)の様に多項式 \(V(x)\) として定義します。当然、原始元 \(v\) は、 \(V(x)\) の根です。

APX5-2 方程式 \(g_0(x)=x^6+180\) とした従来の計算方法

\(V(x)\) は体 \(Q\) では既約多項式なので、【例題1,2,3,4】の考え方では、 \(v\) の最小多項式となります。

\begin{align} g_0(x) \equiv V(x) \ : \ minimal \ polynomial \ of \ v \\ \end{align}

\(g_0(x)\) の次数は6次なので、 ガロア群は \(S_3\) となります。従って組成列は、\([ \ S_3 \ \rhd \ A_3 \ \rhd \ e ]\) となります。 以下【例題1】のEX1-RT4と全く同様な計算なので、説明抜きで計算結果を示します。

【step1】 \(\{ \alpha,\beta,\gamma\}\) の \(v\) の多項式表現を求める計算

代数計算ソフトmaximaの命令を使うと、以下の様に \(f(x)\) を代数体 \(F_0(v)\) 上で簡単に因数分解できます。 従って、\(f(x)\)の根は \(f(x)=0\) を解けば良いわけで、3根 \(\{x_1,x_2,x_3\}\) は、簡単に求まります。

\begin{align} &factor(f(x),g_0(v)); \ \rightarrow \ f(x)=\frac{\left( 18 x-{{v}^{4}}\right) \, \left( 36 x+{{v}^{4}}-18 v\right) \, \left( 36 x+{{v}^{4}}+18 v\right) }{23328} \\ \notag \\ &x_1=-\frac{v^4+18v}{36}, \quad x_2=-\frac{v^4-18v}{36}, \quad x_3=\frac{v^4}{18} \\ \end{align}


上記 \(\{x_1,x_2,x_3\}\) と \(\{ \alpha,\beta,\gamma\}\) は、未だ一対一対応がとれていません。
対応を取るためには、\(w \equiv x_1+2x_2+3x_3\) として、\(\{x_1,x_2,x_3\}\) を6通りの置換をさせてみて、 \(w\) の値が丁度 \(v\) となる置換を見つければよい事になります。その結果は以下の様になります。

\begin{align} \alpha=x_1=-\frac{v^4+18v}{36}, \quad \beta=x_3=\frac{v^4}{18}, \quad \gamma=x_2=-\frac{v^4-18v}{36} \\ \end{align}


【step2】 \(v\) の共役数 \(v_i\) を求める計算

次に式(2)で定義されている \(v\) の共役数をもとめます。手順は対称群 \(S_3\) を使って、 \(\{ \alpha,\beta,\gamma\}\) を 置換させてゆけば良いだけです。以下がその結果となり、勿論全ての共役数 \(v_i\) は、最小多項式の根になっております。

\begin{align} &\left\{ \begin{array}{l} &v_1=v & &v_2=\frac{{{v}^{4}}}{12}+\frac{v}{2} & &v_3=-\frac{{{v}^{4}}}{12}+\frac{v}{2} \\ &v_4=-\frac{{{v}^{4}}}{12}-\frac{v}{2} & &v_5=\frac{{{v}^{4}}}{12}-\frac{v}{2} & &v_6=-v \\ \end{array} \right. \\ \end{align}

\begin{align} \notag \\ &g_0(v_1)=g_0(v_2)=g_0(v_3)=g_0(v_4)=g_0(v_5)=g_0(v_6)=0\\ \end{align}



    次ページに続く


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  1st upload: 2023/06/17
  revision2 : 2023/07/27


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